2021年12月定例会意見書賛成討論(12月23日)

◎32番(坂本茂雄君) 
 お許しをいただきましたので、ただいま議題となりました議発第2号「沖縄戦戦没者の遺骨を含む土砂を埋立てに使用しないよう求める意見書議案」について、賛成の立場から討論をさせていただきます。
 戦後76年を経過した今、戦没者の遺骨収集という問題を通じて、戦争は終わっていないことが私たちに突きつけられています。
 それは、一般住民を巻き込んだ悲惨な地上戦が行われ、多くの貴い命が失われた沖縄県においてです。
昨年4月、防衛省は改良工事等の必要から沖縄県に対して「設計変更申請」を行い、その中の埋め立て土砂計画には候補地の「沖縄県内調達可能量」として南部地区で東京ドーム25個分の調達可能量を明かにしました。
 沖縄島南部は凄惨な地上戦となった沖縄戦の激戦地であり、沖縄県民のみならず、日本兵・朝鮮半島出身者・米兵など、様々な戦没者のご遺骨が今も、その地に眠られています。
 戦没者の遺骨収集が終わっていない当地から採取した土砂を埋め立てに利用することは、戦没者を冒涜し、ご遺族の心情を踏みにじる重大な人権問題であるといえます。
 ここでは、17日の危機管理文化厚生委員会で意見書不一致の理由として出されたご意見などを踏まえて、沖縄戦戦没者の遺骨を含む土砂を埋立てに使用しないよう求めることの理由について、述べさせて頂きます。
 まず、「政府はどこの土を埋め立てに使うか決めていない」とのご意見があったようですが、南部地区での採取が始まってからでは遅いのです。
 防衛省や政府も、遺骨混じりの土砂採取に関して「具体的な調達先は、決まっていないが、仮に南部地区から行われるとしても、採石業者において、ご遺骨に配慮した採取が行われる」との考えを繰り返しています。
 しかし、遺骨に配慮した採取とは、どういうことなのでしょうか。
 土砂採取の際に、遺骨が混入していないことを確認した上で行うと言うことは、「戦没者の遺骨収集の推進に関する法律」により、日本政府が主体となって実施する戦没者の遺骨収集を終えてからのことではないのでしょうか。
 それを行わずに、「ご遺骨に配慮した採取」などは困難であり、12月14日の衆院予算委員会で岸田首相も「沖縄において未だご遺骨の収集が進められているとき、ご遺骨問題は大変重要な問題である」との認識を示されており、政府・防衛省は「戦没者の遺骨等に配慮し、南部地区の土砂は埋め立てに使用しません」と明言することが求められているのではないでしょうか。
 また、「沖縄では掘削で出た遺骨は弔っている」とのご意見もあったようですが、それは当然のことであります。
 むしろ、先ほども述べたように、大量の土砂を掘削しながら、その中から遺骨を分別することは、不可能なのではないかと思わざるをえません。
 糸満市摩文仁の平和祈念公園内にある「平和の礎」には、国籍や軍人、民間人の区別なく、沖縄戦などで亡くなられた24万1632名(2021年6月時点)の氏名が刻銘され、中には本県出身者が1008名も含まれています。
 その糸満市摩文仁を中心に広がる南部地域は、1972年の本土復帰に伴い、戦争の悲惨さや命の貴さを認識し、戦没者の霊を慰めるために、自然公園法に基づき、戦跡としては我が国唯一の「沖縄戦跡国定公園」として指定されています。
 同地域では、沖縄戦で犠牲となった県民や命を落とされた兵士の約3千人近い遺骨が残されているとされ、戦後76年が経過した今でも戦没者の遺骨収集が行われています。
 本県においても、沖縄戦戦没者832人や南方諸地域戦没者17,713人の御霊を弔うため、県民の浄財と郷土産の石材をもって「土佐之塔」が糸満市の隣接町である八重瀬町具志頭の丘に建立されています。
 そして、全国の沖縄以外の46都道府県すべての慰霊碑が周辺に存在すると言うことは、沖縄だけの問題ではなくすべての都道府県、国民の課題であります。
 さらに、「事業を速やかに進めたい」からとのご意見も述べられたようですが、埋め立て事業の加速化が、遺骨収集の推進に優先するのかと問わざるをえません。
 さらに、防衛局のいう南部地区からの土砂調達可能量は、「南部地区の13業者にアンケート調査をした回答」にすぎず、義務づけられている「採掘後の埋め戻し及び植栽」などを無視して、事業を速やかに進めることなど考えられません。
 沖縄県戦没者遺骨収集情報センターの「沖縄での遺骨収集状況」によると2013年から19年の集計では収容数は677柱であり、そのうち約7割の469柱が南部地区からのものであることが報告されています。
 未収骨数が2800柱余と言われている中、2016年4月に施行された「戦没者の遺骨収集の推進に関する法律」にもとづく遺骨収集こそが、丁寧に進められるべきであります。
 法第三条で、「国の責務」として、「国は、戦没者の遺骨収集の推進に関する施策を総合的に策定し、及び確実に実施する責務を有する。」として、2項では「国は、戦没者の遺骨収集の推進に関する施策を講ずるに当たっては、平成二十八年度から平成三十六年度(つまり令和六年度)までの間を、戦没者の遺骨収集の推進に関する施策を集中的に実施する期間とし、戦没者の遺骨収集を計画的かつ効果的に推進するよう必要な措置を講ずるものとする。」としています。
 そして、第五条では、この「集中実施期間」における戦没者の遺骨収集の推進に関する施策を総合的かつ計画的に行うため、戦没者の遺骨収集の推進に関する基本的な計画を策定しなければならないとしています。
 さらに、「集中実施期間における地域ごとの取組方針」は、「一柱でも多くの遺骨を早期に収容又は本邦に送還し、遺族に引き渡すことが国の重要な責務であるとの認識の下、遺族の心情に鑑み、遺骨の尊厳を損なうことのないよう、丁重な配慮をしつつ、この取組方針に基づく戦没者の遺骨収集を推進するもの」とされています。
 このことこそが、沖縄県の皆さんはもちろん、沖縄戦での戦没者を多く出した本県をはじめ全国のご遺族に思いを馳せるときに、取り組むべきことであると言わざるをえません。
 そのためにも、「悲惨な沖縄戦の戦没者の遺骨が混入している可能性がある土砂の埋め立てへの使用は行わないなど、沖縄県民の心情に寄り添う丁寧な対応」を行い、「日本で唯一、住民を巻き込んだ苛烈な地上戦があった沖縄の事情に鑑み、『戦没者の遺骨収集の推進に関する法律』により、日本政府が主体となって戦没者の遺骨収集を実施する」ことを求める本意見書に対して、議員各位の御賛同を心からお願いいたしまして、私の賛成討論とさせていただきます。