2015年12月定例会請願賛成討論(12月25日) |
◎33番(坂本茂雄君) 私は、ただいま議題となりました請第3号「伊方原発再稼働容認の知事発言を再考し、国、愛媛県、四国電力に対し、伊方原発再稼働を行わないことを求める高知県としての行動」の請願について賛成の立場から討論いたします。
まず、改めて、福島を忘れずに、この請願の重みを考えて頂きたいとの思いを述べさせて頂きます。
私は、この11月に3度目となる福島県を訪ねてまいりました。
なかでも、富岡町の避難指示解除準備区域をバスで回った際に、未だに津波被災当時のままの姿を残しており、やっと除染の済んだところから家屋の解体とかが始まりつつある中、道路脇とか街のあちこちに無造作に除染フレコンバッグが置かれているという状況を目の当たりにしました。
そして、2013年1月から郡山市で再開している富岡町養護老人ホーム「東風荘」を訪ねて、施設長からお話を聞かせて頂きました。
爆発後避難する際ね寝たきりの利用者は、毛布などで身体をぐるぐる巻きに包み、四肢を固定させて、その状態のままで職員がバスに乗せ、二人がけシートに寝たきりの利用者を斜めに立てかけたりしてバス避難をして、その過程で、3人の利用者が亡くなられたということでした。
昨日の福井地裁の不当判決も含めて、この国は福島原発事故を忘れていいのでしょうか。その教訓と反省を未来に生かさなくていいのでしょうか。
避難行動において、人権が無視されるような扱われ方とその過程で奪われる命。病院のX線撮影室など一般の人々が立ち入っては行けない場所である「放射線管理区域」ともいうべき地域で、避難指示が出されなかったために数百万人が暮らし続けていたこと、そして、今その「放射線管理区域」で働く放射線業務従事者に対して許される「年間20_シーベルト」という被ばく限度の地域に帰還せよと言われているのです。
事故当時18歳以下の子どもたち約30万人対象の甲状腺がん検査で、152名が悪性甲状腺がん、ないし悪性疑いとの結果が、最新の数値として明らかになり、通常、100万人あたり3人程度といわれる、ほぼ同年齢の日本全国での1年間あたりの発症率と比較した場合、「福島の子どもの甲状腺がん発症率は、通常の20倍から50倍である」と指摘される実態となっています。
さらに、福島県内では、震災と原発事故による避難の長期化で心労を抱え、命を落とす被災者いわゆる「震災(原発事故)関連死」は増え続け、9月8日現在、累計で1959人に上っており、地震や津波による直接死の1604人を大きく上回っているのです。
「伊方原発の再稼働」はやむをえないと考えられている方々にはしっかりとこのことと向き合って頂いた上で、請願について判断して頂きたいと願っています。
請願は、尾ア知事の「県民生活や県経済に不可欠な電力を安定供給するためには、現時点では、伊方発電所3号炉の再稼働はやむを得ない」という判断に対して、再考を促し、高知県として、同機の再稼働を行わないことを国、四国電力に求める行動をとり、同様の行動をとることを愛媛県にも働きかけることを求めたものです。
県は、商工農林水産委員会で、請願書における理由に対して四国電力との勉強会における説明を示していますが、そこには伊方原発再稼働前提の四国電力の言い分が列挙されているとしか思えません。
時間の都合上、すべての理由項目についての四国電力の主張に対して反論する時間はありませんので、大きくは知事の判断の根拠となっている二つについて述べておきたいと思います。
そこで、まず、「安全性の説明を合理的とする」考え方についてです。
請願でも言われているとおり、原子力規制委員会の「適合」判断には、IAEAの「5層防護」の考え方も反映されていません。
そして、その新規制基準は、国会事故調査委員会や原子力専門家の「地震動そのものによる配管破断の可能性が高い」との指摘を踏まえておらず、福島原発事故の原因究明に基づいていないこと。
さらに水素濃度基準値13%の定めはあるものの、炉心溶融時の水素爆ごうへの対応など、シビアアクシデントへの対応策がおざなりであること。
また、炉心溶融を防ぐためのコアキャッチャーは設置義務化されていないこと。
南海トラフ地震では、火力発電所の津波被災で8ケ月間以上の長期広域停電が警告されているが、電源確保について、規制基準は1週間の対応でよしとし、四国電力の説明でも最大14日間となっていること。
そして、避難計画策定は規制基準に入っていないことなど、世界一厳しい基準と言えるものではないことを指摘せざるをえません。
何よりも規制委員会田中委員長自身が、「安全審査ではなく、基準の適合性の審査であり、基準の適合性は見ているが、安全だとは申し上げていない」と述べているように、審査合格をもって、安全が確保されたとは言えないものです。
さらに、高レベル廃棄物の処理方法は、いまだ確立されておらず、伊方原発の燃料プールの保管可能量はあと8年分であり、これ以上使用済み核燃料を増やすべきではありません。さらに、MOX燃料は、地層処分ができる表面温度100度に冷えるまで、500年もかかると言われており、その間、伊方原発の燃料プールで保管することなど到底不可能なことであり、単に国任せにして放置したまま、再稼働へと向かうことは許されないと思います。
次に、「電力の安定供給のためには原発再稼働しかない」との考え方についてです。
四国電力は、「老朽化した火力発電所を総動員して何とか電力の供給力を確保している」と説明していますが、そもそも、日本全体の電力需要が低下している上に、福島原発事故後、企業は自己発電能力を強化しており、過去10年間、原発以外の発電施設による電力供給で、電力需要は充分まかなえており、現在では、余裕電力3%は確保できる状態にあります。
それでも、「老朽化火力では、電力需要に不安がある」というのであれば、原発を再稼働するのではなく、住民の命に係わる事故を起こすこともなく工期も短く、建設費も原発と比較して少ないガスコンバインド発電に切り替えるという選択が適当だと請願者らは指摘しています。
これに対してガスコンバインド発電へのリプレースに7〜8年を要するという四国電力の説明を県は合理的と受け止めているのでしょうか。資源エネルギー庁の「高効率火力発電の導入推進について」には、環境アセスメントの迅速化を図るため「従来3年程度かかる火力のリプレースを1年強程度に短縮」との記載もあり、ガスコンバインドサイクル発電の工期は最短で1〜2年、通常3年とされている中、実際、3年かからずに導入されているものもあります。
老朽火力発電所をガスコンバインドサイクル発電所へとリプレースしていくことと、数年以内に原発を代替しうると言われる導入ポテンシャルが存在する再生可能エネルギーへの転換を図ることで、伊方原発再稼働を容認するという判断を回避できるのではないでしょうか。
なぜ、四国電力は原発再稼働ではない選択肢を可能とすることに力を注ごうとしないのか。そこには県が求め続ける「将来に向けて原発への依存度を徐々に低減すべき」という要請に応えきれない四国電力の原発再稼働ありきの姿勢が立ちはだかっているとしか思えません。
県下で8割を超す市町村議会が、伊方原発再稼働反対の意見書を採択しており、11月12日可決した檮原町議会における「伊方原発再稼働容認に対し抗議する意見書」では、「本町は、伊方原発から50qの範囲内に位置しており、危険きわまりない状況であることは町民のみならず、万民の知るところである。だから今こそ、我々が立ち上がり未来を担う子どもたちに「負」の産物を残してはいけないのである。よって再稼働を容認した関係機関、関係者に抗議する」としており、このような声を県と県議会はしっかりと受け止めるべきだと思います。
高知新聞にも大きく取り上げられましたが、12月5日、私も聞かせて頂いた民間シンクタンク「環境総合研究所」の青山顧問は「地域における放射線量の影響要因」として「発生源の強度」「気象条件」「地形条件」「測定条件」を抜きに、「一律同心円」で影響状況を考えることは極めて危険であることを強調されました。
そして、風向きによっては「高知市以西はどこも、国際放射線防護委員会の規定に基づく一般人の年間被ばく線量の限度1_シーベルトをはるかに超える」とシミュレートされる中、高知県にとっても隣県のことではなく、当事者として再稼働容認の考えを改めるべきではないかと考えます。
原発事故が起きれば、高知県産業振興計画の柱である第一次産業、地産外商への影響、南海トラフ地震におけるリスクの拡大、子どもたちの将来の健康被害につながることは明らかで、そのことを事前に回避することこそが求められていると思います。
議員各位におかれましては、3.11以降のフクシマと真摯に向き合い、将来の高知県民とその暮らしに真摯に向き合うことを考え、この請願にご賛同頂きますようお願いして賛成討論とします。