12月定例会修正案提案説明(07年12月27日)

議発第4号議案第一号平成19年度高知県一般会計補正予算の一部修正案について提案理由の説明をさせて頂きます。これは第3表中、試験研究機関等のアウトソーシング推進関連予算12件1億7千711万7千円のうち9件を削除し、3件にするとともに予算を減額修正し、2千2百8万9千円とするものです。
 削除するもの以外の3件については、農業技術センターの栽培実習指導補助業務等委託料及び果樹試験場の園地除草等委託料は原案通りとし、農業大学校のアウトソーシング推進関連栽培実習指導補助業務等委託料については予算2千百11万5千円が計上されておりますが、非常勤職員が行っている舎監業務についてのアウトソーシング経費はやむをえないということで5百73万円のみに減額修正したものであります。
 減額に至った理由は、ただいまの産業経済委員会委員長報告にもありましたように、これらのアウトソーシングが本県基幹産業である第一次産業を支える教育・研究という重要な機関の円滑な業務遂行に大きな悪影響をもたらさざるをえないからであります。
 まず、第一に、人材の問題であります。多くの試験研究機関では、研究員とともに技能職、非常勤職員との連携の中で研究業務が円滑に行われております。そして、研究課題を踏まえての研究員の考察や指示、ベテランの技能職・非常勤職員の知識と経験によって一体的に行われてきたことで安定的に研究が進められ、その成果が本県1次産業等に活かされてきました。県はコア以外の業務を外に出せると判断したと言いますけれども、現場の研究員の方たちは、技能職や非常勤職員の経験、知恵に学ばされることも多いと率直に感じられており、一体的に研究業務を形成してきたというのが実態であり、この内容では、研究水準の低下等を大変危惧せざるをえません。
 県はおおむね労働者派遣法による人材派遣でこれをまかなおうとしていますが、同等レベルの人材が安定的かつ継続的に確保できるかどうかは疑問であります。現在それぞれの所属で働いている非常勤職員の雇用を打ち切り、派遣元となる派遣会社に再就職してもらい、そこから派遣によってもとの試験研究機関で働いてもらうことが想定されております。しかし、労働条件次第では必ずしも派遣会社に再就職するとは限りません。それは、これまでの県におけるアウトソーシングの例を見ても、労働条件等が劣悪なために労働者が短期間でやめている事例が生じていることからもあきらかです。従って、同一の人材が安定的かつ継続的に確保できる保障はどこにもありません。
 さらに、県は派遣労働者の受け入れについて、きちんと責任を果たすとしていますが、これまで県は、民民のことだから派遣労働者の賃金労働条件等については口出しはできないと言ってきたわけであり、きちんと担保・検証するシステムがないなかで、その実効性は確保されないといわざるを得ません。
 第二に、派遣・請負手法の問題であります。仮に当面は派遣で対応するとしても労働者派遣法による派遣は同一業務について最長3年までしか認められておらず、同法第40条の5の規定からすれば、3年後は完全請負委託か派遣労働者の直雇いしかなく、完全請負委託ができなければ、元の通り職員を直接雇用しなければなりません。
 今回の提案にあたって、現場の研究員は「3年後に完全請負委託にはならない。研究業務の特性上、状況に応じて指示をしながら進めないと試験研究の意味がない」といいます。つまり、3年後には研究業務を円滑に行おうとすると、偽装請負になることの疑いは極めて高いと思われます。そうなれば何のためにアウトソーシングしたのかということになります。
 知事は、本会議でもアウトソーシングを行った上で「うまくいかない場合があれば、直営に戻す選択もあり得る」と答弁されましたが、その時に、経験と知恵を身につけた人材はいなくなってしまっていると言うことです。
 研究に着手して成果、結果を出すまでには相当な時間がかかるわけで、しかも安定的にやらないといけないわけです。だからこそ、研究現場の皆さんが無理のあるアウトソーシングについて、ずっと懸念しており、問題が生じたら元に戻すというスタンスではダメだと考えています。県としてもアウトソーシングしてやっていけるとの100%の自信はないはずです。だから当面派遣でやってみて最終的に請負委託で行えるかどうか検証してみるとの姿勢なのだと思います。
 この点、産経委員会の質疑でも委員から「研究や教育そのものがコアだ。うまくいかなかったらという問題ではない」などの意見がありましたように、研究課題が途中で停滞するようなことがあってはならないし、そのようなリスクを避けるためにも指摘している業務のアウトソーシングは取り止めるべきであります。
 また、請負委託によるアウトソーシングを予定している所属においても委託仕様書において、受託業者が完全に独立して業務を遂行できるかというと、これまた、研究員の指示等が想定され、偽装請負になる可能性がどうしてもぬぐいきれないものであります。
 第三に、経費の問題です。茶業試験場ではほ場管理業務等委託料として7,476千円を限度として計上されておりますけれども、現行の非常勤職員の経費より628千円コストアップになっているわけです。また、他の試験研究機関では経費削減効果があるとの委員会答弁もありますが、他の職場に配転となった技能職員の人件費は配転先で計上することになるわけです。これが、いわゆるダブルコストであります。ここまで無理をしてアウトソーシングをすることは、財政状況が厳しい中で極めて問題は大きいと言わざるを得ません。
 また、20年30年と勤めてきたベテランの技能職員の転職などで、試験研究機関によっては、研究員や非常勤職員の負担が大きくなるとともに、レベルがダウンしていることも聞いていますが、せっかく積み上げた技能と経験を活用しない手はありません。転職するベテランの技能職員を技術職員として現場に残し、同一業務に従事させることを考えるべきであります。アウトソーシングよりも、その方が職員の能力と経験をフルに活用でき、さらにダブルコストを避けることができるのです。
 第四は非常勤職員の雇用打ち切り問題です。1年雇用の原則とはいえ、現実的には業務の継続性から10年、20年と働きつづけてきています。月13万円足らずの報酬でも家計を支えながら、試験研究業務を通じて県政の発展に尽くされてきた非常勤職員も多くいます。そうした方々の雇用を打ち切っていて、民間における雇用の創出といっても、首を切った非常勤職員を派遣会社に移すのであれば、単なる雇用の移動にしかすぎませんし、さらには不安定雇用労働者をつくりだすことになります。
 以上のことから、試験研究・教育業務等におけるこのたびのアウトソーシング手法はなじまないといわざるを得ません。したがってこの分野におけるアウトソーシング推進関連補正予算案については問題が生じる恐れがあるものについては削除することとしたものであります。
 知事は一次産業の一・五次産業化ということを繰り返しおっしゃっています。一次産品をブランド化していくためにも、試験研究の果たす役割は大きなものがあることは分かって頂けると思います。ここに、現在配布されている「さんさん高知」08年1月号がありますけれども、まさに試験研究機関の特集が行われています。過去10年間の約560件の研究成果のうち「一般に普及された」と評価されたものが約45%の253件に及んでいることが表紙で述べられ、いくつかの成果も紹介されています。ナスの新品種「土佐鷹」をはじめとした野菜や果樹、花卉の新品種の開発、はちきん地鶏、土佐ジローをはじめとした農林水産資源の高度利用高付加価値化、土着天敵を活用した総合的病害虫管理技術の確立などを図ってきた試験研究機関の取り組みなしに、知事の公約は果たせないことになってしまうのではないかと懸念します。
 尾崎県政のスタートを飾るにあまりにもふさわしくない債務負担行為予算であることをご理解いただき、修正案に対する同僚議員のご賛同を心からお願い申し上げまして提案理由の説明とさせて頂きます。