2020年9月定例会一般質問(10月6日)

32番(坂本茂雄君) 私どもは、一問一答、質問席は、マスク不着用ということでさせていただくことになっておりますが、執行部の皆さんは着用ということで、答弁が大変しづらい面があろうかと思いますが、その辺はお許しをいただきまして、よろしくお願いしたいと思います。
 まず、代表質問で、岡田議員も触れられましたが、私のほうからも菅新首相が記者会見で、「私が目指す社会像、それは、自助、共助、公助、そして、絆であります。まずは、自分でやってみる。そして、家族、地域でお互いに助け合う。その上で、政府がセーフティネットでお守りをする」と述べられたことについてお尋ねしたいと思います。
 この言葉を聞きまして、私は、公助とは国の役割そのものであり、国は公助を最優先して国民の生活を守るということをしないのであれば、もはや、その存在意義を失うのではないかと思わざるを得ませんでした。そして、国のトップリーダーが、国民に対して、まずは自助で頑張れ。できなければ、家族、地域に助けてもらえと、自助や共助に大きな役割を負わせるような社会像を抱くことに対して、不信感を持たざるを得ませんでした。目指すべきは、国民の生活や社会の隅々に公助を行き渡らせ、自助や共助を日常的にしっかりと支援した上で、ほころびのない公助というセーフティネットを張り巡らせておくことが必要であり、公助の充実を優先させることなのではないのかとの思いでお聞きします。
 この自助、共助、公助という言葉は、社会福祉の分野ではかつてから使われていましたが、人口に膾炙するようになったのは、災害対応として使われ始めたことによるものだと思います。阪神淡路大震災では、生き埋めや建築物などに閉じ込められた人のうち、生存して、救出されて、約95%の方は、自力または家族や隣人などに助けられましたと、「南海地震備えちょき」にもあります。
 その際、自助、共助、公助は、本来、共助を強調するための表現であり、今回、菅首相が使われたような自助最優先、公助の縮小のようなものではなかったと考えますが、知事は、災害時における自助、共助、公助をどのように考えているのか、お聞きします。

◎知事(M田省司君) 災害対策におきましては、公助が果たす役割、これは大変大きいと思っておりまして、例えば、災害の予防の局面におきましては、河川・海岸堤防の耐震化ですとか、津波避難タワーの整備、避難所の事前の確保、こういった役割を公助の分野で担うということだと考えておりますし、発災後も、特に、ヘリコプターなどによります救助・救出作業などを考えました場合、公助の果たす役割は大変大きいというふうに思っております。
 ただ一方で、御指摘もありましたように、南海トラフ地震などの大規模地震の発生時、特に、直後の災害応急活動の局面を考えますと、要救助者あるいは避難者が広域で同時に多数発生するという状況でございますから、いわゆる公助だけで全て対応するとことは現実問題として無理があるということでございます。

 こうしたことを考えますと、地域住民によります救助活動あるいは避難所の開設、運営といった自助、共助の取り組みも大変重要な役割を果たすということであると思います。
 そうした中で、県民の皆様に、いざというときに、また、自助、共助に取り組んでいただけるように、常日ごろから、しっかりと支援していくということも公の役割になってくるというふうに考えております。

32番(坂本茂雄君) 災害直後、一時的な状況、場面では、どうしても公助が届かない場合がありますので、その際には、自助、共助で命を守りつなぐということが必要になろうかと思います。その際には、先ほど、知事が言われましたように、そこを事前にきちんと支援しておく。自助、共助が力を発揮できるように支援しておくということが公助の大きな役割だろうと思いますので、その点を、今後ともよろしくお願いしておきたいと思います。
 また、菅首相が自助、共助、公助という言葉を持ち出すときの根底にある通念は、自助7割、共助2割、公助1割で、公助の限界を示し、基本的には自己責任を唱えるニュアンスとされているように思えました。自助7割論は、阪神淡路大震災ではこうであったという事実を実証的に示した数字に過ぎなかったはずであり、今回の菅首相の言葉は、自助で7割頑張ってもらって、公助は1割しかできないんですよといった意味合いに聞こえてしまうのです。
 そこでお聞きしますが、県政においては、国、県、市町村が果たす役割が公助であると思われます。知事は、公助の役割や比率をどのように位置づけているか、お聞きします。

◎知事(M田省司君) 公助につきましては、自助や共助で対応できない問題、課題に関しまして、行政の活動を通じて、言わば、社会全体でヒト、モノ、カネといった資源を直接的に投入して課題解決を図っていくと、そういう活動であるというふうに理解をいたしております。
 ただ、こうした社会共有の資源、行政を通じた活動にはおのずと限りがございますので、まずは、自助共助で対応できますように、日ごろから、これを支援していくということも、公の重要な役割であるというふうに考えております。
 また、公助の定量的なあり方ということに関しまして申しますと、公助、あるいは、そもそもの公の役割につきましては、その時々の社会情勢でございましたり、個々の政策、あるいは、問題、場面ごとに異なると考えられますので、予め一律どの程度が公助を占めるというような数字を設定するというのは困難だと思いますけれども。いずれにいたしましても、自助、共助、公助、これの最適な組み合わせを目指していくということが重要であるというふうに考えております。

32番(坂本茂雄君) 実は、けさの朝日新聞に、耕論というページで、自助、公助、共助について、記事が載ってありました。その中で、中央大学の宮本教授が言っていたのは、「やはり、この自助、共助、公助の比率を曖昧にしてきているところに問題もある」というふうなことを言われています。「これからは、そこをきちんと議論していくことも必要ではないのか」というふうなことも言われている中で、知事が言われた最適な比率というのは、施策、施策によって違う面もあろうかと思いますけれども、ぜひ当初、私が言いましたように、公助がやはりその社会の隅々に行き渡って、自助や、あるいは、共助の力を発揮できるような、そんな施策を高知県では目指していただきたいことをお願いしておきたいと思います。
 そこで、次に、自助や共助を高めるために、備えの面で、どれだけ公助が役割を果たすのかという視点で、コロナ禍の自然災害における「分散避難」などの避難行動を促す支援のあり方について、お尋ねします。
 新型コロナウイルス感染症が拡大する中で、豪雨災害や地震などが発生するという複合災害の懸念に対して、従来の避難行動、避難所運営に大きな課題が投げかけられ、内閣府や厚生労働省は次々に対応指針を発表し、次の地震や出水期を迎える前への備えが急がれました。
 NHKが行った九州、沖縄、中国、四国の市町村に対する取材で、台風10号の避難所の受け入れ状況において、新型コロナウイルスの影響で受け入れ人数を減らしたことなどが原因で、定員に達して、新たな受け入れができなくなった避難所は、九州、山口など8県116の市町村の514カ所に上ったことが明らかになっています。こうした市町村では、余裕のある別の避難所を案内したり、急遽、新たに避難所を開設するなどの対応もとられたとのことです。
 一方、高知新聞などによりますと、鹿児島市では、定員オーバーの13カ所の避難所でも「風雨が強まる中、受け入れを断られた住民が再び移動するのは危険」と事前の取り決めどおり、訪れた全員を受け入れたそうです。
 これらの事象については、多くの避難所が新型コロナウイルスの感染対策で受け入れ人数を減らしたことや、最大級の警戒が呼びかけられ、積極的に避難をした人が増えたことが背景にあると見られています。
 そんな中で、幸いにも、コースの影響などによって、大きな被害は少なかったものの、コロナによる感染リスクが高い中、本県での避難行動や避難所開設、運営について、どうあるべきかについて質問をさせていただきたいと思います。
 今回の台風10号における避難準備、高齢者等避難開始情報が発せられたのは、県内24市町村で、対象者数は614,000人だったとされていますが、260カ所の避難所しか開設されなかったとお聞きしています。 今回の260カ所の開設避難所の避難者受入定数で十分だったと言えるのか、危機管理部長にお聞きします。

◎危機管理部長(堀田幸雄君) 台風第10号の際には、高齢者等の避難を促し、その他の方に避難の準備をしていただくため、県内で避難準備、高齢者等避難開始情報が約614,000人の方を対象に発令されました。どれくらいの避難所を開設するかは、市町村ごとに過去の事例を参考にしながら決定をしており、災害や避難の状況にあわせて、随時ふやすこととしています。結果としてですが、680人の方が避難をされましたが、これに対して260カ所の避難所が開設されており、感染症対策を考慮しても十分なスペースが確保できていたと考えています。

32番(坂本茂雄君) たまたま、今回はコースがそれたというようなこととかの状況で、通常よりも多くの避難者が避難所に向かわなかったということがあろうかと思います。
 ただ、やはり、それは災害の状況によって、その想定を超えるような避難者が出てくる場合もあろうかと思うわけです。そういった意味で、この豪雨災害対応における避難所で、コロナ禍の感染症対策として三密回避を取った場合の最大定数はどれだけなのか、危機管理部長にお聞きします。

◎危機管理部長(堀田幸雄君) 市町村においては、平成30年7月豪雨、平成26年8月豪雨などの過去の大きな災害時の避難者数をもとに、想定避難者数を合計で1万3,119人と設定してございます。その想定避難者を三密回避の対策を行いつつ収容できるよう738カ所の避難所を開設できる態勢を整えています。

32番(坂本茂雄君) 738カ所の避難所を開設するということが、現実的に今の市町村の状況とか、あるいは、地域の状況で可能なのか、また、それは後ほど人材育成の面でお聞きしたいと思います。
 続きまして、これからは、コロナ禍をはじめとした感染症リスク回避のために、指定避難所をふやす一方で、指定避難所に避難する人数を減らすために「分散避難」という手法が、南海トラフ地震も含めた今後の災害の避難行動のあり方として、より周知されることになると思われます。
 しかし、県民の命を守るためには、避難所への避難を躊躇なく選択してもらうことが、最優先でなければなりませんし、一方で、分散避難の選択肢である「在宅避難」や「車中泊避難」、「指定避難所以外の避難所」に避難した場合、「避難所運営のマニュアル」にもあるように、指定避難所が全ての被災者への支援の拠点として機能しなければなりません。
 「分散避難」を選択した際、避難生活が長引く中では、避難者登録がされていなかったり、支援拠点である避難所に出向くことができない在宅避難者などに、食料提供や身体、心のケアなどの体制が図られるなど指定避難所同様の支援策が整えられておくべきだと考えますが、どうなっているのか、知事にお聞きします。

◎知事(M田省司君) 御指摘がございましたように、大規模災害時などにおきましては、避難所外に避難される場合というのも想定しなければならないということだと思っております。こうした避難所外に避難された方々に、適切な支援を実施するためには、まずは、避難所に備え置きました名簿に、避難所外の方々の氏名あるいは必要な物資などを登録していただく、こういう必要がございますので、市町村と連携をして、この点についての周知を徹底しております。
 そして、避難所に出向くことが難しい方々に関しましては、自主防災組織あるいはボランティアの方々のお力をお借りして、物資などを配布していくということを想定しております。また、そうした方々への心のケアも含めました健康管理につきましては、例えば、保健師によります家庭訪問などを通じまして、健康チェックあるいは健康相談などを行いまして、必要な支援を実施するといった対応を想定しているところでございます。

32番(坂本茂雄君) 私の質問では、南海トラフ地震のことを想定した場合には、先ほど知事が言われるような、いわゆる、そういうふうに分散避難した指定避難所以外の避難所におられる在宅避難の方などのところに、自主防災会やあるいは地域のボランティアの方が出向くということは、長期浸水ということなどを考えたら、これは到底無理なことなんですね。そういう意味で、いわゆる在宅避難などをはじめとした方たちのところへの支援の仕組みというのは、もっと丁寧にきめ細かく考えておかないと、実際のときにどういうことになるかということを考えたら、大変大きな問題が生じることになると思います。
 それともう一つ、いわゆる、あらかじめ避難者登録をするということが、なかなかそういうことができない人たちが在宅避難をしたりする可能性が高いわけですね。そういった意味でも、把握漏れというのも出てくるかと思います。
 そんなことに対する支援策なども、もっときめ細かに検討していただきたいと思いますが、そういったことを今後なされるおつもりはあるか、知事にお伺いします。

◎知事(M田省司君) そうした場面を、議員の御指摘のような場面を想定しての準備ということでございますが、市町村におきましては、現状、必要に応じて対応を検討するという考え方で、まだ、役割なり、手順なりの仕組みづくりまではできていない市町村も多いのではないかというふうに思います。
 また、特に、大規模災害を想定いたしますと、議員から御指摘のありました、地域でのボランティアあるいは自主防災組織のみでは対応できないという場合には、外からの応援といったものの受け入れ、そして、それをどう態勢に組み込んでいくかということもしっかりと考えておかなければいけないということだと思います。
 そうした点も含めまして、今後は、市町村と連携をいたしまして、避難所運営マニュアルの中にそうした要素も組み込んでいくことなどを検討してまいりたいと考えております。

32番(坂本茂雄君) まだまだ知事の答弁に対して、いろいろ言いたいこともありますけれども、時間の関係で省きますが、ぜひ、もっと実態を想定したきめ細かな対応策を、今後検討していただきたいというふうに思います。
 続きまして、感染症対応に伴う避難所の不足ということは、今後、否めない面があろうかと思います。そういった意味で、避難所の量の拡大と、環境整備という質の向上について、お聞きしたいと思います。
 これまでの間、よく言われるのは、1930年に起きた北伊豆地震のときの避難所を撮影した写真と、現在の避難所を比較して、この間ほぼ90年間、避難所のありようはほとんど変わっていないということが言われます。
 床にじかに毛布などを敷いての雑魚寝、プライバシーを守るためのパーティションも設置できないほどの避難者の密度、高齢者・障害者・妊産婦・乳幼児などの要配慮者のためのスペースやニーズへの対応の不足、トイレの整備の不足といった問題は、避難所の規模に関係なく、長年にわたり指摘され、健康被害や関連死が起こってきた現実があります。
 だからこそ、これからの避難所は、災害リスクを回避できる立地場所で、三密回避対策や衛生設備を設置した感染症対策やプライバシー保護などへの対応が求められることによって、どうしても指定避難所ごとの受け入れ可能な避難者数は抑制されることから、指定避難所をふやすとともに、指定避難所やそれ以外の避難所も環境改善を図ることが求められてきます。
 そこで、お聞きします。南海トラフ地震の際に、指定避難所において、感染症対応の三密回避を講じるとすれば、現状の指定避難所の量では、不足することが想定されますが、L1、L2のそれぞれの場合に、どれだけ不足することが考えられるか、危機管理部長にお尋ねします。

◎危機管理部長(堀田幸雄君) 現状、避難スペースは通路も含めて1人当たり3平米としていますが、コロナ対応では1.5倍の4.5平米が必要となります。
 まず、L1地震では、県全体で想定避難者数9万2,000人に対して、コロナに対応した場合でも、それを超える171,000人分の避難スペースを確保できています。
 次に、L2地震では、県全体で想定避難者数228,000人に対して、コロナ対応をした場合には、現時点では8万6,000人分の不足となります。

32番(坂本茂雄君) ぜひ、L2も想定した上でのその不足分をどうやって補っていくのかということを、今後は検討していただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いします。
 コロナ禍は、避難所のあり方を大きく改善する機会でもあるというふうに言われています。避難所にありがちな、先ほど言いました体育館での雑魚寝という環境は、抜本的に見直されるべきであり、避難行動を促すためにも、感染リスクの低い、環境のよい避難所をより多く開設することが求められていると考えますが、本県でもそのように取り組むべきではないのか、知事にお伺いします。

◎知事(M田省司君) 御指摘がございましたように、感染リスクが低く、また環境のよい避難所をできるだけ数多く確保していくという方向での取り組みが重要であると考えます。県におきましては、市町村と連携をいたしまして、避難所運営マニュアルを策定するといったこと。また、関係の資機材の整備を支援する。さらには、開設、運営の訓練の実施。こういった取り組みを行っているところでございます。また、市町村に対しましては、避難所におきます三密回避ために、可能な限り多くの避難所を開設するように要請いたしております。
 一方で、市町村のほうでは、現実にどこまでの数の避難所を増設できるかということに関しましては、職員のマンパワーなどの課題もあるといった声もお聞きをいたしておりますが、いずれにいたしましても、そのときの災害の状況に応じて、必要な避難所を確保していくという考え方で対応していくことになるというふうに考えております。

32番(坂本茂雄君) より多く開設するということは、実は、より身近なところに開設されるということなんです。そのことが、避難者にとっては避難しようという、そういう行動を促すことにもなってくると思うんですね。さらには、その避難所が、避難したくなるような避難所であるというようなことも求められてきますし、それが、まさに環境改善されているかどうかによって決まってくるということだろうと思いますので、ぜひ、その点を取り組みながら、避難者に対する、まずは、避難行動を躊躇させない、そういう取り組みにつなげていただきたいというふうに思いますので、ぜひ、今後も、この機会に避難所の環境改善に積極的に取り組むと、そのことをお願いしておきたいというふうに思います。
 それは、次の質問でありますけれども、実は、以前にも、2年前の9月定例会でも取り上げました「スフィア基準」、このことが、やはり、私は今でも気にかかっています。この「スフィア基準」によって、災害関連死を防ぐというようなことなども含めて、避難者の環境改善を図るということの1つの目安になっているのではないか。
 そんな中で、実は、「スフィア基準」は、避難所の1人当たりの広さ、3.5平米とされていますけれども、平成27年度に県内10カ所のモデル避難所において、避難所運営マニュアルを作成した際の、モデル避難所での一人当たりの広さは3.5平米を超えているところは1つもありませんでした。
 そういった意味では、さらにさらに、本県においても、避難所の環境改善というのは、強めていかなければならないというふうに思っています。
 いずれにしましても、「スフィア基準」というのは、決して、その数値をクリアするということだけではなくて、避難所生活が、トイレを我慢させたり、パンやアルファ米の食事だけではなくて、災害関連死を生じさせたりするような人間の尊厳を奪うものであってはならないというのが、「スフィア基準」の目標とするところだと私は思っています。
 そのため、高知県版「スフィア基準」の設定による避難所環境の整備を本気で図るべきだと考えますが、知事にお聞きします。

◎知事(M田省司君) 避難所の環境整備に関してでございますが、県では、平成25年度に、関係部局と市町村におきますワーキンググループを設置いたしておりまして、大規模災害に備えた避難所運営マニュアル作成の手引きを、このグループの中で作成をしてまいりました。
 また、昨年度は、特に、高齢者の方々あるいは障害者の方々などへの支援を強化するという考え方に立ちまして、要配慮者対策を強化した手引きを作成いたしまして、今年度は、特に、感染症対応の参考となりますような国、民間団体のマニュアルを市町村にお示しするといったような動きをとってきたところでございます。
 こうした手引きなどによりまして、国の指針あるいは他県の先行事例を踏まえ、また、専門家の御意見もいただきながら、高知県の特性にあわせて作成をしているというところでございまして、今、お話が議員からございました高知県版の避難所基準と言えるものをつくろうという考え方に立って対応をしてきたものであるというふうに考えております。
 今後も、県民の皆さんに、災害時におきまして良好な環境のもとで避難生活を送っていただけるように、国内外のさまざまな参考にすべき基準、考え方を取り入れながら、必要に応じまして、このマニュアルのバージョンアップを進めてまいりたいと考えております。
 また、避難所の確保あるいは資機材の整備などにつきましても、市町村と連携をして全力で取り組んでまいります。

32番(坂本茂雄君) 続きまして、分散避難の選択肢の1つとして、「ホテル・旅館等や民間施設の借り上げ」に対して、災害救助法が適用されない災害においても、新型コロナ対応として実施する場合は、地方創生臨時交付金の活用が可能であるとされています。
 これからは、コロナ対応に限らず、コロナ以外の感染症対応としても、分散避難に取り組まれる場合が一般的になるであろうことから、そのための財源を恒常的に確保すべきであることを国に提言すべきではないかと考えますが、知事にお伺いします。

◎知事(M田省司君) 御指摘の点につきましては、全国的に、各県におきましても関心が高まっている点でございまして、先般も全国知事会におきましては、国に対しまして、例えば、間仕切りやテント、換気設備など、避難所におきます感染防止対策に必要な機材の整備でございますとか、あるいは、避難先となる宿泊施設の借り上げ、こういった自治体の避難態勢強化への安定的な財政支援制度を創設するということについて、提言を行っているところでございます。
 県としましては、こうした提言も含めまして、全国知事会と連携をして、国に対して提言、要望に取り組んでまいる考えでございます。

32番(坂本茂雄君) それで、先ほどもお話ありましたけれども、避難所を開設する際の人材の問題について、お伺いします。
 今でも、避難所運営の大きな課題の1つとして、自治体職員を初めとして、環境整備や運営を担える人材の圧倒的な不足が考えられています。感染症対応のもとでの災害ボランティアのあり方からしますと、今後は、いろんな意味で、より不足すると、県外からも来られない、あるいは、地域の中でもいろんな課題が出てくるというようなことなどを含めて、不足するものと思われます。
 そのためにも、避難所開設をふやしていく際には、被災自治体や地域内で避難所を開設、運営できる人材を育成することが必要であると思われます。南海トラフ地震の際には、避難者が開設、運営することが求められていますが、台風や風水害においても、自治体職員と自主防災会を初めとした地域住民が協働で開設運営を行うことで、不足する人材育成につなげては、どうか、危機管理部長にお伺いします。

◎危機管理部長(堀田幸雄君) 南海トラフ地震発生時に、地域住民による避難所の開設運営を円滑に行うためには、毎年発生する風水害時において、行政と地域住民が協働して避難所の開設運営を行い、馴れておくことが重要と考えています。
 現在でも、約半数の市町村では、職員のみではなく、地域住民の方にも参加していただきながら、風水害時の避難所運営に取り組んでいただいております。
 また、県では、昨年度、地域住民が主体となって風水害時においても避難所運営を実施している自主防災組織を表彰しており、そうした先進的な取り組みを広く知っていただき、住民による避難所運営につながるよう、今年度改定をします自主防災組織の活動事例集に掲載をして、市町村や自主防災組織に配布することとしています。

32番(坂本茂雄君) わかりました。
 地域住民のスキルアップとともに、やっぱり自治体職員もいわゆる災害担当の部局、部署にいれば関心を持ってやるけれども、異動で変わってしまうとそうならなくなるということのないような、やっぱり、みんなでこの災害時を乗り越えていくというような意識を醸成していただきたいということもあわせてお願いしておきたいと思います。
 最後に、全ての被災者の1日も早い生活復旧につながるような支援策として「災害ケースマネジメント」という制度の導入について、お伺いします。
 「災害ケースマネジメント」というのは、多種多様な困難を抱えた被災者への支援の実践の中から生まれたもので、申請主義のもと本人の訴えや申請を待つのではなく、支援する側からアプローチする「アウトリーチ」の手順で行い、被災者一人一人に必要な支援を行うため、被災者に寄り添い、その個別の被災状況、生活状況などを把握し、それにあわせて、さまざまな支援策を組み立て、連携して支援する仕組みのことであります。
 東日本大震災以降、宮城県の仙台市、名取市や、岩手県の大船渡市、北上市での採用、平成28年台風第10号の際の岩手県岩泉町、熊本地震での熊本市、そして、熊本県での仙台市スキームの採用、鳥取県中部地震での鳥取県、大阪北部地震での高槻市、西日本豪雨災害での愛媛県、岡山県、広島県及び各県被災市町村などで、これらが採用されてきました。
 本県でも、避難所開設期の避難所外避難者や避難所閉鎖以降も全ての被災者に対して、災害後、被災者が取り残されることなく、1日も早い生活復旧につながるよう、この「災害ケースマネジメント」という被災者に対する個別対応としての支援制度を導入すべきと考えますが、知事にお伺いします。

◎知事(M田省司君) 御指摘がございました「災害ケースマネジメント」の考え方に沿うような対応に関しましては、災害時に被災者一人一人に寄り添いまして、被災状況、生活状況などに応じて必要な支援を行っていくこと、そして、被災者が取り残されることなく1日も早い生活復旧につなげていくと、こういった取り組みを行っていくということは非常に大切な視点であるというふうに考えております。
 こうした趣旨に添う取り組みといたしまして、県内の社会福祉協議会におきましては、災害ボランティア活動の一環といたしまして、仮設住宅の入居者などの見守り活動を実施しながら、個々の被災者のニーズを把握し、必要な支援を実施するということといたしているところでございます。
 また、同様に関連した取り組みといたしまして申し上げますと、平成28年には、県内の弁護士会、税理士会、司法書士会など8団体で構成をいたします土佐士業交流会と協定を締結いたしまして、被災者がさまざまな分野の専門家からアドバイスを受けられるような相談会を開催するというような取り組みもしているところでございます。
 さらに、今年3月には、総務省の行政評価局が災害時の住まい確保などに関します調査の結果報告を取りまとめておりまして、そうした中では、地方公共団体におきまして、避難所外避難者のニーズを的確かつ迅速に把握するための方策を検討すべしといった点、あるいは、支援制度の未利用者などに対します、御指摘がございましたアウトリーチの早期実施などについて取り組むべしといった方向が示されているというところでございます。
 今後は、こうした国の動向も注視を一方でしながら、ただいま申し上げました現在の仕組み、特に、社協で既に組んでいただいておるような態勢でございますが、こういったものを活用し、さらに進化させていくという観点に立ちまして、本県におきます被災者支援のあり方について、さらに検討を深めてまいりたいと考えております。

32番(坂本茂雄君) やはり社協さんだけに負担をかけるようなことではなくて、さっき言われました士業連絡会とか、そことの連携とかいうことも必要になってきます。そういうところを含めて、今、高知県でこの「災害ケースマネジメント」について学習とか、そういうことがされたというような実績はあるんでしょうか。多分、ないなんじゃないかと思いますね。
 そういう中で、これから本当に、先ほど知事が言われたような内容の取り組みができるように、真剣に向き合っていただきたいというふうに思っています。それが、まさに、被災後に、誰1人取り残さない、被災者を誰1人取り残さない支援になっていくだろうというふうに思っています。
 鳥取県がなぜこの制度を入れたかと言いますと、これは、7月に、あるZOOM会議で、鳥取県の危機管理局長からお伺いしたんですけれども、鳥取県中部地震で約1万5,000件の一部損壊があったんです。そういったところに対して、支援制度を拡充して支援をしたけれども、まだまだブルーシートが取れない世帯が1,000戸ほど残ったと。この1,000戸ほど残ったブルーシートがかけられたままの家庭をどうやって減らしていくのかということで、やっぱり1軒1軒訪問していくしかないんだということで、この「災害ケースマネジメント」を活用しようということで、条例に盛り込んだというような経緯があります。それを決断したのも、知事です。そういった意味では、ほんとに、先ほど答弁されたことを、知事、もう一度決意として述べていただけませんか。

◎知事(M田省司君) ただいま申し上げましたように、災害の際には、さまざまな被災者の方々が御苦労をされるということだと思います。
 そうした中で、既存のいろんな制度の中からこぼれるような形で、救済が必要な、求めておられる方々もたくさん来得るということだと思いますので、そうしたことを心におきまして、そうした方々に寄り添った対応、アウトリーチの対応も含めまして、対応できていく、そういう態勢をしっかりと深めていくということに関しまして、しっかりと検討を進めてまいりたいと考えます。

32番(坂本茂雄君) ありがとうございました。
 それで、先ほども触れましたけれども、鳥取県では、「鳥取県防災及び危機管理に関する基本条例」の第25条の2(被災者の生活復興支援体制の構築)として「鳥取県版災害ケースマネジメント」をうたい込んでいます。お隣の徳島県では、昨年12月に策定した復興指針に、「災害ケースマネジメントによる支援」として、事前の検討が盛り込まれています。
 本県では、南海トラフ地震による災害に強い地域社会づくり条例第31条の3項に、「あらかじめ、被災者の生活の再建への支援、社会基盤の再建、経済の復興等の方法の検討その他必要な対策の実施に努める」とありますが、「南海トラフ地震対策行動計画」などに盛り込むべきではないかと考えますが、どのように位置づけるか、危機管理部長にお尋ねします。

◎危機管理部長(堀田幸雄君) 先ほど知事が申しました、被災者支援のあり方について検討した上で、必要な取り組みについて、南海トラフ地震対策行動計画に位置づけ、取り組みを進めてまいります。

32番(坂本茂雄君) 今回は、コロナ禍のもとの感染症対応を通じて、見直される避難行動や避難所のあり方、そして、避難生活の中で誰1人取り残されることのない支援制度としての「災害ケースマネジメント」について、質問をさせていただきました。
 そのためにも、M田県政は、公助を県政の隅々に行き渡らせることを前提とした施策を充実していただきたいということを再度お願いいたしまして、私の一切の質問とさせていただきます。