お許しを頂きましたので、第2号「職員の給与に関する条例等の一部を改正する議案」から第4号議案に関連して知事に何点か質問させて頂きます。
今回の議案は、人事委員会勧告の扱い方において、いくつかの疑問を持たざるをえないような議案となっておりますが、できるだけ重複を避ける形で質問させて頂きますが、多少の重複はお許し頂きたいと思います。
ただし、どうしても述べておかなければならないことがあります。日本の人事院制度は国際労働機関ILOのドライヤー報告で「スト権の制限禁止には、そのことによって自己の権利を守る唯一の手段を奪われた労働者の利益を完全に保護する代償措置が必要である。日本の法律は禁止の範囲が広すぎ、かつ代償措置も十分とは言えない」と評価されるほど不十分なものであります。しかし、いくら不十分でも、憲法に定められた労働基本権の一部を公務員から奪い取った代わりに、その唯一の代償措置として制度化された人事委員会からの勧告が知事の思い一つで、ないがしろにされるようなものではないということです。そのことを踏まえて誠意ある答弁をお願いしたいと思います。
まず、第二号議案についての附則第5項関係の期末手当の特例措置についてであります。
人事委員会による勧告では給料月額の0.3%を12月から引き下げるという内容でありながら、そのことを軽視して、改正条例案では附則によって期末手当において四月遡及の減額調整をするという措置を何故しなければならないのか理解できません。そこで知事に、お聞きしますが、
@本来、人事委員会勧告を尊重する姿勢にあれば、今回も勧告通りの実施が前提であったはずだろうと思います。また、総務部当局はその考え方を知事に進言していたことは庁議の概要でも明らかにされています。その進言をくつがえしてまで、四月遡及にこだわったのは臨時議会で増額改定をしなければならないことのみが、知事の勧告尊重姿勢を変えさせる原因となったのでしょうか。
また、知事は勧告を尊重して完全実施するのが本来の姿なのですから、県民に説明する理由を人事委員会だけに求めるのではなく、自らも説明する理由を明らかにすべきだと思うが、何故しようとしないのか。しようとしたのであればどのような手法をとられたのかお伺いします。
A知事は、人事委員会勧告制度は一方では「基本的に尊重する」と言いながら、一方では行革検討委員会の場で「人事委員会制度はおかしいというのが社会常識である」などと言っているが、知事の考え方の中では、どちらのウェィトが大きいのかお尋ねします。
次に、来年4月から改定しようとする給料表と昇給方法についてであります。この改定は給料表の水準を平均5.6%引き下げ、さらに現行の号給を4分割して査定による昇給を行うというもので50年ぶりの大幅な給与制度の見直しであると言われています。都市部における地域手当は本県などでは医師を除いて支給されることなく、全ての職員の給与水準は大きく引き下げられます。中高年層では10%程度の引き下げとなり、いくら現給保障とは言え将来生活への不安は隠しきれません。
また、査定昇給の導入についても、僅かな評価の差で、給料が連動するようになれば、県民に目を向けるどころか評価者である上司にばかり目を向けるようになり、イエスマンが蔓延する組織となり、さらにお互いが指導しあったり支え合ったりという職場で職員を育てるという人間関係と人材育成機能は破壊されることが危惧されます。以上のようなことからも、私は、この制度のあり方如何によっては職員、教職員、警察職員の将来生活や勤労意欲、また県庁組織の一体性が確保されるのかどうかなど大変心配しており、県庁の将来に大きな影響を与えかねない大幅な給与制度の見直しが十分な議論もされないままに、今臨時議会で決定されなければならないことに疑問を感じます。これらの改定は来年四月からのことであり、ぎりぎり2月議会での条例改正でも対応可能であろうとも思います。他県でも、2月定例会を目途に話し合いが継続されている県も多々ありますが、今一度、充分な労使協議も行う中で、不透明な部分も解明した上で、提案されることが望ましいと思います。
そこで知事にお尋ねしますが、
@まず、平均5.6%引き下げるという公民格差が妥当であると判断した理由を示していただきたいと思います。そして、査定昇給のあり方も含めたこの改定によって、職員の将来生活と勤務意欲、さらには組織の一体感の確保が可能と考えられているのか。可能であるとすれば、それぞれにその根拠も示していただきたいと思います。
A査定昇給制度についても、少なくとも評価基準に基づく査定結果による昇給昇格のあり方は当然労使交渉課題であると考えるが、これについて職員組合には示した上で、話し合われたのかお尋ねします。
B来年4月からの給料表と昇給方法の改定は50年ぶりの大幅な給与制度の見直しであり、極めて慎重な議論がされるべきだと思います。その意味でも、本議会の決定ではなく、この部分については継続して慎重に議論されるべきだと考えますが、何故臨時議会にこだわられたのかお伺いします。
最後に、人事委員長にお伺いしますが、今回の勧告は諸般の情勢も考慮して、給与水準の引き下げ改定に伴う減額調整は行わないことが適当であり、期末手当における四月遡及の減額調整については残念であるとしながら、一方でやむを得ないとする判断は人事委員会機能を自ら放棄したのではないかとさえ思わざるをえません。今後も今回のような措置が執行部によって取られるとした場合、人事委員会機能が執行部によって形骸化させられていくことになります。さらに、知事には「人事委員会制度はおかしいというのが社会常識である」とまで言われて、人事委員会の存在意義があると考えるのかお尋ねしまして、第1問とします。
【橋本知事答弁】
坂本議員のご質問にお答えします。
まず、人事委員会の勧告どおりの実施ができない理由は何かなどのお尋ねがありました。今回の給与改定にあたっても、人事委員会の勧告を尊重するという基本的な姿勢に変わりはありません。一方、特例条例によって給与の減額を行わざるを得ないほどの危機的な財政状況の中で、人件費の増額につながるような給与改定を行うことは、県民のみなさんにご説明ができないと考えて減額調整の判断をしました。逆に減額調整を実施しないという判断について県民のみなさんに納得していただけるだけの理由がわかりません。ですから、人事委員会の委員長さんにその理由をお聞きしましたら、納得できるお答えをいただくことができませんでしたので、減額調整を行わざるを得ないと判断をしました。
次に、人事委員会勧告と人事委員会制度に関する私の考え方についてお尋ねがありました。人事委員会の勧告を尊重するという私の基本的な姿勢は変わりません。ただ、将来に向けて制度の課題を踏まえた見直しの議論は必要だと考えていますし、このことは国でも検討をされています。 次に、来年度からの給料表の導入に関します一連のご質問にお答えをします。
今回の人事委員会の勧告では、来年度からの給与構造の見直しに伴う改定として、国家公務員の俸給表の改定に準じて給料表の改定を行うこととされています。県は従来から人事委員会の勧告を尊重するという基本的な姿勢で対処してきましたので、お話にありました新しい給料につきましても、人事委員会の勧告に沿って国家公務員に準じて改定しようとするものです。このことによって今後の職員の生活に影響があると思いますし、給料の額が勤務意欲の一つの要素であることも間違いありません。ただ、その一方で勤務意欲は業務の内容やポスト、さらには仕事のやりがいや充実感、使命感など様々な要素が相まって高まってくるものだと思いますので、その点でも査定昇給の制度はまさに職員の意欲を高めるためのものだと考えています。
一方、組織の一体感を確保するためには業務のうえでの目標の共有や、職場でのコミュニケーションを高めていくことが重要ですが、こうしたことは大多数の職員に理解されていることだと思います。
次に査定昇給の制度と交渉についてお尋ねがありました。この度の職員団体との交渉の中でも人事考課の見直しの内容や、昇給の評価の区分の考え方などについてはできる範囲で明らかにしましたし、今後も職員や職員団体に対してお示しできる部分は順次お示しをすることにしています。もとより、これらのことは職員団体と交渉の場を持つような案件には該当しませんが、状況に応じて事務レベルで話し合いをしてはどうかと職員団体にもお伝えをしています。
次に来年度からの給与の改定案を、この臨時議会に提案した理由についてお尋ねがありました。今年の給与の改定に関しましては、12月期の勤勉手当の支給の月数を引き上げますとともに、12月期の期末手当で減額調整を行うことにしていますことから、11月臨時会の開催をお願いしました。
一方、来年度からの給与構造の見直しに伴う改定は来年4月1日からの施行ですが、2月の定例会でご審議をいただくことにしますと、給与システムの回収など日程上の支障が生じますことから遅くとも12月の定例会でご審議をお願いしなければなりません。こうした状況の中、近接した日程で開催をされます11月の臨時会と12月の定例会とをあえて2つに分ける必然性はないと考えました。
あわせて人事委員会の勧告は今年の給与の改定と来年度からの給与構造の見直しに伴う改定について議会と知事になされたものですので、一体的にご審議をいただくべきだと考えましてこの臨時会にあわせてご提案をしています。私からは以上でございます。
【上谷人事委員長答弁】
坂本議員の質問にお答えいたします。
人事委員会の勧告と異なる給与条例の改正について、人事委員会の存在意義につきましてお尋ねがございました。お話のありました知事の発言の内容につきましては、充分に私はその内容につきまして承知をしておりませんが、人事委員会は独立して権限を行使する合議制の行政組織として地方公務員法に定められた執行機関で、その法律に定める権限義務を所持をしております。ご案内のとおりであります。
また、給与勧告制度は労働基本権を制約された代償措置であり、勧告に際しまして中立的な立場で行われるべきものであると考えておりまして、この立場に変わりはございません。以上です。
【坂本議員再質問】
答弁のされ方に非常に不満を感じる部分があるんですが、少しずつずらしたりしながらの答弁であったように思うんですね。例えば私が最初聞いたのは、増額改定をしなければならないことのみが原因となったのかどうかということを聞いているわけですが、そのことのみがそうだったのかそうでなかったのかということは明確に答えていただきたいというふうに思っているんです。そのために通告制度はあるんじゃないかというふうに思いますけれども、いくつかの理由で今回こういった勧告の内容と違う措置をとられているわけです。
ただ、先ほど田頭議員も指摘をされましたけれども、私は県民に対して説明する理由は多々あるだろうと、本当に知事が人事委員会といっしょになって説明する気があったのかどうかなんですね。例えば人事委員会に対してそういう理由はありますかというふうに聞いて、人事委員会なりの答えがされたかもしれませんが、それが知事がもし納得いかなければ、じゃあ最終的に判断するまでに納得いくだけの理由を示してもらえませんかと、私も考えてみますと、そのうえで勧告を尊重するかしないかどうか判断しましょうというのが私は判断に至る過程であってしかるべきじゃないかと。しかも総務部などは今年はこういった形で人勧を尊重しましょうよというふうに言ってるんですけれども、知事は家へ帰っていろいろ考えたらどうしても納得ができないと、知事が納得ができなければ納得する理由を本当は執行部もいろいろ集めて、納得できる理由を示してそれで県民に説明していこうと判断してこそ、はじめて私は勧告尊重という姿勢に一環のブレもないということが知事として言えるんじゃないかなと思います。
例えば増額改定することが県民の説明のつかないことだと言われたりしておりますけれども、予算上で言っても先ほど田頭議員が指摘されました、財源的には例年人件費について12月補正で大幅な減額補正を人件費はされているんですね。そのうえでもなおかつ、例えば時間外手当などでいうと昨年度の不要額が2億8千万というふうな状況になってますから、人件費予算そのものの総額にはつながらないだろうというふうに思います。
そういうようなこと、さらにはこれまでの職員の賃金状況を見たときに、この10年間で期末勤勉手当が約0.85月減額され賃金が10%ダウンし、現在特例条例で行っております3%のカットに加えて今回の0.3%の引き下げ、そしてさらに地域給が入るというような状況の中で、職員の期末勤勉手当が0.05月引き上げられるからといって、それは許せないというふうに一体県民の方が見られるのかどうか、そこをきちんと私は説明してみる必要があるだろうと思います。今、高知県の職員の制度値による賃金水準は本当に全国でも最下位の状況になっています。そういったことなどを含めて本当に知事が勧告尊重の姿勢があって、その努力をどれだけしてきたのかということは、私はもう一度お聞きしておきたいというふうに思います。
それともう一つの給料表と昇給方法の改定等についてであります。先ほどわかる範囲でお示しをしながら職員団体とも話をしてきたというふうに言われております。しかしそのわかる範囲というのが非常に充分ではなくて、例えば先ほどから国準拠などというふうなことを言われておりますけれども、国の考え方を踏まえていろんな運用の仕方を示そうにも国の考え方が来年1月にならないと出されないというような状況で、それがまた出てきた段階で話をしましょうみたいなことになっているわけですね。ですからそういう意味では私たちはとにかく「この制度だけは認めてくれ」「その制度の運用等についてはまた後で考えてくれ」では、今会議会の中で審議するにおいても大変理解と納得に苦しむところが議員側としてもあるんじゃないかなというふうなことが思われます。そういう意味でも私は来年4月制度化ということは一定あるにしても、それに伴ういろんな運用の面については、充分話し合いをしていただくという考え方があるのかどうかということについてももう一度お聞きしておきたいというふうに思います。とりあえず以上2点再質問という形でお聞きします。
【橋本知事再答弁】
坂本議員の再質問にお答えをいたします。
まず、勧告尊重への努力はどのようなことをしたのかというお話でございます。先ほども申し上げましたように、人事委員会の勧告についてのご報告をいただきましたときに、委員長さんにどういう理由でということは充分お話をお伺いをいたしました。そこに至るまでに人事委員会としても当然充分な議論がなされ、協議がなされたうえでの勧告でございますので、そこでのご意見を承って私として減額調整をしないだけの理由はないということを判断をいたしました。知事として充分なその意味では人事委員会との間での努力をしてきたというふうに私は思います。
それからもう一つ今後の運用につきましての組合(職員団体)との関係についてお話がございました。このことは先ほどお答えをしたとおりでございますが、事務的には充分情報を交換をしながら意見交換をしていけばいいのではないかと考えております。
【坂本議員再々質問】
時間がありませんのであまり多くは述べられませんが、一つは先ほど後段の部分で言われました、査定給のあり方などを含めた情報について事務的にはお示しをしたいということですが、ここに大きく見解の違いがあるかもしれません。というのは、たんに情報をお示しするということではなくて、その運用のあり方は本当に適当なのかどうなのか、高知県においてそういった運用のあり方で望ましいのかということまで含めた議論が本来されるべきだと思いますね。今の知事のお話は、「情報としてお示しします」「事務的にお話はします」ということですけれども、私は本来基準表をつくるところから交渉事項であるだろうというふうに思いますけれども、例えばそれは基準表をつくること自体が管理運営事項であるという見解に立つとしても、そのことによって評価をしてどのように運用するかということは、大きく賃金・労働条件に関わることですからこれは交渉事項であってしかるべきだろうというふうに思います。その意味でぜひこのことについてはたんに事務的・情報的にお示しするということだけではなくて、充分に意見も聞くというふうなことで話し合いがされるということで受け止めていいのか、お伺いをしておきます。
もう一つは先ほどの人勧尊重姿勢をどういう形で実現しようとしたかということで、充分なことをしてきたかのように知事はお答えになりましたけれども、私はそれは決して充分ではないというふうに思っています。本当に県民に対して説明する意欲があるんであれば、いろんな情報をつかんで先ほどから言われている他県の情報なども含めて、情報をつかんだうえで説明をするべきだろうというふうに思っています。ただ、その際に説明をする際に県民の目線がどうかということを知事は之までの過程の中で言われております。交渉の場であったり、あるいは庁議・記者会見の場であったりそういう場で耳にするわけですけれども、私は県民の目線というときに先ほど言いましたように、この10年間ぐらいの間に職員の賃金水準は大幅に低下してきて、そのことをどうしても許せない、さらに4月に遡及しないといけないという目線と、一方で知事の1期4年間退職金4000万円ということは許せる県民の目線というのはいっしょなのかなというふうなことも思ったりします。ぜひそういう意味では附則5項・6項は削除修正して提案し直すべきであるというふうに考えておりますので、それについてもう一度お伺いして一切の質問を終わります。
【橋本知事再々答弁】
坂本議員の質問にお答えをいたします。
先ほどからご答弁しておりますように、考え方に変わりはございません。